派遣村シリーズ⑥ 「いい不動産屋発見！？」

派遣村シリーズ⑤　のつづき。


広田さんの新しい職場での働きぶりは、高く評価され、
まだ入って数か月だというのに、新人に教える立場になっていた。

そうなのだ。この人、元々仕事ができる人なのだ。
昔、一緒に働いてたから、それは私もよく知っている。
収入も順調に得られ、必要最低限の金額はなんとか出来た。

4月に入ってから広田さんはアパート探しを始めていた。

家電なし、風呂なし、トイレ共同で、
あとはホントに屋根があって寝泊まりさえできればいいって、
そんな最低条件なのに見つからない。

いや、むしろそんな条件の低いところを探してるから見つからないのだ。
レオパレスなんかはお金さえあれば入居できそうだ。
が、風呂トイレ家電まで付いている分、高い。
広田さんにとっては、途方も無く高い。

その上、また大きな問題がひとつ。

 

保証人がいないのだ。
広田さんの両親は保証人に相応しい収入が無いので無理。
…でも、当の本人は…。

 

いまいち、その問題の大きさが分かってない感じ…。

 

私は今お世話になってる不動産屋に出会うまで、すごく苦労した。
広田さんと同じ理由。
「親が保証人にふさわしい収入を持っていない」
これが一番のネックだった。
何度も何度も断られて、辛かった。
断られる度、お前のような者にと蔑まれてるようで、
自分を支えている何かが削られていくようだった。
たぶん、あれと同じ経験をこれからすることになるのだろうと思うと…、
せめて私ん家に居られる4月15日までに新居が決まれば…
と思わずにいられない。

不動産巡りをする休日の前の晩、
たくさんの不動産屋のホームページをプリントアウトした。
その中に、とび抜けて家賃が安い物件を揃えていて、
親切そうな雰囲気の不動産屋があった。
もう、ここがダメだったら他にないだろうというくらい桁外れな物件揃い。
そういう物件が揃っているということは、
そういう物件を求める種類の人達を対応慣れしてるはずでもあるし。
果物の名前の不動産屋。
ズバリ言うのはよくないかもしれないので、仮名をバナナ不動産とする。
案外簡単に新居が決まるかもしれない。
私もそう思った。
広田さんは私以上に確信に近いものを得たようで
「あ、もう俺、朝一番でここ行くだけで決定だから（笑）」と、
他の不動産屋のページもプリントアウトしようとする私を制止した。

翌日、広田さんは不動産巡りに行って、帰ってきた。
たくさんの不動産屋に行ったけど、
その大半に門前払いに近い扱いを受けて凹んでた。

ただ、最初に見込んだバナナ不動産は違ったと言う。

とても親切で話もよく聞いてくれて、
本当は保証人が必要な物件の大家さんに
何とかならないかお願いしてみると言ってくれたそうだ。
結果はタイムリミット5日前に出るとのことだった。
広田さんが活き活きと話するのを見て、
よっぽどよく事情を聞いてくれて、嬉しかったんだなって、
なんだか私まで嬉しくなって、バナナ不動産屋に感謝した。

派遣村シリーズ⑦　に続く…。

※ 最初から読む場合はコチラ。


【今朝の体重】　55.6ｋｇ
【昨夜の走行】　約10ｋｍ
【昨夜の腹筋】
　　　普通の腹筋　10回
　　　足揚げ腹筋　40回　
　　　　　　　　　　借筋　-670回