派遣村シリーズ② 「不幸の連続」

前回の記事の続き。


元旦夜、なんの予告もなく、いきなり私んちを訪ねてきた広田さん。
２年ぶりの再開の言葉に、私は絶句した。

「派遣切りに遭っちゃった、たはは…。」

「え、今（年末）ニュースでめっちゃ話題の派遣切りですか！？（笑）」
一発目はとりあえず、友達として笑い飛ばしてみた。広田さんも一緒に笑ってた。
この2年で色んなことがあったんだと言う。
何があったのか聞いてみて、私はまたも絶句した。
不幸は派遣切りだけじゃなかったのだ。

この人、どんだけツイてないの？



…いや、むしろ、
　
何か憑いてんじゃなかろうか（汗）

広田さんは昔のバイト先の先輩で、私より２コ上の３５歳。
時間の経過だけを数えると１０年来の友達だ。
なんとも恥ずかしい記憶を辿らなければならないんだけど、
私が関東に上京したばかりで、すごく田舎くさく、方言丸出しで、
男どころか女にも相手にされないルックスである上に、
クソが付くほど真面目で融通の効かない人間だった時代、
広田さんは唯一、なんの見返りもなしに気さくに声を掛けてくれて、
バイト仲間と打ちとけられない私の背中を押してくれた人だ。
ちょっとした恩人と言っても過言ではない。

そんな人柄かつ仕事もできる人だったから、後輩に慕われてたし、
社員さんや先輩にも一目おかれていたし、異性にもモテてたし、
そう、あれだ、ムードメーカーというやつだった。
広田さんの周りはいつも賑やかだった。
おかげで、ちょっと自信家で、時々不敵に笑う顔が印象的だった。


そんな広田さんが、今は私の前で小さくなっている。


声がとても自信なさげで、いつも通りに笑っているつもりだろうけど、
なんだかおどおどした気配を隠し切れて無い。
しかも、そう、ドアを開けて一番に感じた違和感は、その身なりだ。
別にボロを着てたわけじゃない。服のセンスも悪くない。
ただ、その日は元旦。１月。冬だよね？って時に、
秋口に着るものと思われる、薄い上着しか羽織ってなかった。
買うべき上着も買えないような状況にある。そういうことだ。

「どうしよう、久しぶりにすごく安心したんだけど。ははは…」
と、空笑いする広田さんは、ちょっと泣いてるように見えた。
…なんてこった。
安堵して涙が出そうになるくらいって…どんな目に遭ったんだ？

昨年まで、広田さんは都外の某電機メーカーの工場で、
寮付きの派遣で真面目にコツコツ働いていた。
その工場には、色んな派遣会社からきた派遣がいたが、
不況に伴ない、一社、一社、消えていってたそうだ。
早めに切られたところは、３ヶ月前だとかに
契約期限切れの前、余裕をもって告げられてたみたいだけど、
広田さん達、ギリギリまで契約が続いていたところは、
とんでもなく急だったようだ。

①　「うちの派遣会社は大丈夫ですよ」
　　　　　↓　↓　↓
②　「うちも契約を打ち切られますが、年明けまでは大丈夫です」
　　　　　↓　↓　↓
③　「すいません、明日、寮を出て行って下さい」（年末の出来事）

いきなり、住まいを取り上げられるだけでも堪えるのに
（散々安心させるようなこと言っておいて「明日」って…）、
広田さんは①と②の間でも心に大ダメージを受けていた。

広田さんには工場で仲良くなって、２年もつるんでいた友人がいたそうだ。
その友人と「年末までは大丈夫」と言われて、お酒を飲んでいたそうだ。
広田さんは散々飲まされ、すっかり深い眠りに落ちてしまった。
朝起きて、部屋に戻ったら、家財一式＆現金が消えており、
それだけで衝撃だというのに、おまけに、

水の入ったガラスのコップに
　
自分の携帯が沈んでいた　と言う…。

友人の連絡先やその友人の恋人の連絡先はおろか、
すべての友人の連絡先をも失ったわけである。

当事者の言葉によると、お金より携帯の被害の方がショックだったと言う。
そんなにおかしな話ではないと思う。
だって、最近の友達ってメアドと携帯番号で繋がってて、
住所や自宅電話を知らないってのが殆どじゃないだろうか？
「金の切れ目が縁の切れ目」と古い言葉があるけれど、
今の時代では「携帯メモリーの切れ目が縁の切れ目」である。

広田さんの友人…いや、もう友人じゃないな。
（広田さんが許すと言っても、私は認めんからな！）
元友人の泥棒は、そこまで分かった上でやったんだろうか？

あんまりにも酷い仕打ち。
　
自分のことしか考えてないにも
　
ほどがある（怒）

そんな経緯があって私にメールも電話もできず、
急な来訪となったわけだ。なるほどね。

しかも、「友達って何だろう…」と思わずにはいられない事態はまだ続く。
私を訪ねる前に、他の友達らにSOSメールを送っていたらしいが、
どれだけ経っても返事が返ってこなかったらしい…。
これまた、相当な精神的ダメージだよ…。


どんなにか辛かっただろう。


「仕事と住居を失った」ばかりではなく、
「人間関係も失った」という人は
広田さん以外にもいそうだなと思った。
まぁ、広田さんは極端な例なんだろうけど（苦笑）



～　教訓②　男の友情　～
「男の友情」って強固なイメージだったけど、案外モロいらしい。

派遣村シリーズ③　へつづく。

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【今朝の体重】　55.4kg
【昨日の走行】　さぼり。
【昨日の腹筋】　50回　　借金筋　－330回　減らなーい。